エコパスコラム

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企業人のためのエコロジー入門(No.2「レジリエンスと生物多様性」)

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本シリーズでは、 生物多様性に取り組む人が知っておくべき生態学の知識について、ポイントを絞ってお伝えします。

その2 「レジリエンスと生物多様性」

 

最近、「レジリエンス」という言葉を聞く機会が増えてきました。“経済危機や自然災害などのアクシデントから回復する社会の力”として社会・経済の中で広く使われるようになっていますが、もともとは生態学の用語で、何かのアクシデントに対する「対応力」(正確には“かく乱の影響を受けた生物群集が元の状態に戻る速さ、および許容できるかく乱の程度”)といった意味で使われていました。2013年のダボス会議において、グローバル経済リスクに対する日本のレジリエンスが国際競争力の高い国々の中でとびぬけて低いと指摘されたことが、レジリエンスに社会の注目が集まっている理由の一つです。

図1生態系は本来、このレジリエンスを備えたシステムです。例えば、台風や山火事によって森林が破壊されたとしても、しばらく経つと元々あった森林が再生してきます。レジリエンスのような生態系を安定に保つ機能は生物多様性との結びつきが深く、大雑把に言えば生態系を構成する種が減るほどレジリエンスも低下してしまいます(右図参照)。
では生態系のレジリエンスを保つためにはどうすればよいのでしょうか。それは本来の生態系を構成する種をできるだけ減らさない、減っている場合は再生する、ということに尽きます。生態系の中で果たす役割は種ごとに異なります。かく乱の影響からすぐに回復できる種もいれば、時間がかかる種もいます。多くの資源や空間を占めてしまう種もいれば、ほんのわずかしか使わない種もいます。しかしどんな種であっても、他の種とのつながりは不可欠です。生態系が劣化するリスクを避け安定した状態を保つためには、できるだけ種を減らさないという予防策が最も望ましい対策なのです。

安定化のために異なる特徴を持った要素を組み合わせるという予防策は、投資におけるポートフォリオの効果と同じことです。生物種でも金融商品でも、構成要素の多様性が高まれば、全体(生態系や全資産)としての安定性が高まることは共通のようです。

 

多くの種が絶滅の危機に瀕している現在、生態系のレジリエンスをまもるために生物の多様性を保全することが不可欠、というイメージが湧いてきましたか?今後の見通しがつきにくい現代社会であるからこそ、事業活動でもCSRでもレジリエンスを重視できる企業こそが生き残っていく時代に入っているのかもしれません。

 

◆参考とした資料◆

内閣官房ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会(第1回)資料8

van Ruijven and Berendse (2010) Diversity enhances community recovery, but not resistance, after drought, Journal of Ecology, 98(1), 81-86.

 

by 北澤哲弥

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