エコパスコラム

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企業人のためのエコロジー入門(No.3「SDGsと生物多様性」

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「SDGs(持続可能な開発目標)の文脈で生物多様性活動をどう位置づければよいのか」、「わが社は生物多様性に関するSDGs課題とは関係がなさそうだ」など、SDGsと生物多様性の関係について様々な声がきかれるようになりました。SDGsを用いて社会課題を明確化し、世界全体で取り組んでいくという現在の流れについては、私も賛成です。しかしその流れの中で、特に日本企業では生物多様性への意識が希薄になっている感じを受けます。なぜ生物多様性の保全が社会課題とされるようになったかを再認識し、そのうえでSDGsの達成に生物多様性はどのような役割を果たすのか、考えてみたいと思います。

生物多様性の価値は長い間、経済システムの中で正しく評価されず、「外部不経済」状態が続いてきました。その結果、森林や干潟、サンゴ礁といった生態系が減少・劣化し、大気や水の浄化機能などの生態系サービスが低下しています。気候変動や水リスクなど、様々な環境課題が顕在化してきたのはこのためです。2005年に国連がまとめたミレニアム生態系評価は、生物多様性の劣化によって顕在化したリスクが、特に社会的な弱者(女性、子供、貧しい人々など)の福利を低下させていることを指摘しました。すなわち、生物多様性の劣化とそれに伴う生態系サービスの低下が、貧困や女性、子供などに関わる社会課題を引き起こす一因にもなっているのです。

SDGsの17ゴールについて考える際も、この考え方は大切なヒントを与えてくれます。この図は、TEEB(「生態系と生物多様性の経済学」に関する国際プロジェクト)がSDGsと生物多様性の関係を整理したものです。生物多様性に直結する海域生態系(目標14)と陸域生態系(目標15)、生態系サービスに関わる水(目標6)と気候変動(目標13)は地球の「生物圏(Biosphere)」に関わる目標です。この生物圏に支えられて社会(Society)が成立し、その社会に支えられて経済(Economy)が動いているという3層構造が示され、すべてのSDGsはこの中に位置づけることができます。TEEBは「SDGsの目標はこのような相互関係を持つため、分けて考えることはできない」と、統合的なアプローチの重要性を指摘しています。

このように生物多様性は社会や経済を支える存在であり、関係性の強弱はあるとしても生物多様性と無関係な企業や個人はありえません。SDGsを用いて自社事業と社会課題の関係性を整理する企業は確実に増えてきています。その際は、SDGs間の関係性を考慮しながら整理を進め、自社の事業として取り組むべきこととともに、関係はやや薄くても解決すべき社会課題も明確化することが求められます。

 

◆引用・参考資料◆

Millennium Ecosystem Assessment (2005) Ecosystems and Human Well-being: Synthesis. World Resources Institute. Island Press, Washington DC.

TEEB website < http://www.teebweb.org/sdgs/>(2017年2月9日現在)

 

(by 北澤 哲弥)

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