エコパスコラム

企業の生物多様性の取り組みに役立つ情報を更新していきます

企業人のためのエコロジー入門(No.4「SDGsと生物多様性 その2」

| 0件のコメント

前回、SDGsの目標同士の関係性について紹介しましたが、目標について理解が進んでくると、日本ではどの目標がどれくらい取り組まれているのか、あるいはどの国で取り組みが進んでいるのか、といった現状も気になってきます。ドイツのベルテルスマン財団は、世界のSDGsへの取り組み状況をまとめた”SDGs index and dashboard”を2016年に発表しました。SDGsの目標とターゲット全てを包括するものではありませんが、大まかな進捗を目標別・国別に把握するうえで大変参考となる情報です。

 

 

表 日本におけるSDGs達成状況の評価

17のSDGs全ての進捗状況を平均スコア化したSDG indexによると、現時点で最も目標達成に近づいている国はスウェーデンで、欧州諸国が上位を占めています。日本は20位で、アジア各国の中では最も進んだ国として評価されています。しかし目標達成に向けて本当に大事なことは、他国との比較ではなく自分たちの進み具合です。そこでSDG dashboardで日本の進捗状況を目標別にみると、達成していると評価された目標が3つあったのに対し、達成にほど遠い目標が7つもありました。日本は世界的に見て進んでいる方ではありますが、国内にも目標達成に向けた課題がまだまだ山積していることがわかります。

 

このSDG dashboardでの日本の評価と、TEEBの統合的アプローチの概念をあわせて考えると、日本がどの分野で取り組みが進み、どの分野で出遅れているかを明らかにできます。上図を見ると、比較的取り組みが進んでいるのは「経済」の分野で、4つの目標はそれぞれ目標に達していることを示す緑色と目標への道半ばの黄色の評価を受けていることがわかります。しかし「経済」を支える「社会」の分野になると、達成にほど遠いことを示す赤色の評価を受けた目標が一部に見られ、さらに「社会」を支える「環境」分野では4つの目標のうちの3つを赤が占めています。このことは、人間社会を支える生態系サービスとその源である陸海域の生物多様性保全の重要性が叫ばれているにもかかわらず、取り組みが進んでいないことを示しています。企業にとって直接的に関係する課題は「経済」や「社会」分野であり、「環境」の課題は関係ないと思っていることが、分野間での進捗状況の差を生み出しているのかもしれません。

こうした状況にあるからこそ、SDGsの統合的なアプローチの重要性(前回参照)を理解することが企業には求められます。本業に直結する目標に対応することは確かに重要ですが、企業を支える社会、社会を支える環境の課題解決に取り組むことも自社の持続可能性を高めるうえで不可欠という意識を持たなければなりません。

日本経済の基礎を築き上げた渋沢栄一は、著書「論語と算盤」の中で以下のように述べています。

『正しい道理で稼いだ富でなければ、その富は永続できない。利益(算盤)と道徳(論語)は決して矛盾しない』

不確実性が高まっている現代において、企業のサステナビリティを考えるうえで、この指摘は非常に示唆に富んだものだと思います。SDGsの統合的アプローチは「利益と道徳を両立させる企業経営」という渋沢栄一の視点を、改めて企業に問いかけているのではないでしょうか。

 

◆引用・参考資料◆

TEEB website < http://www.teebweb.org/sdgs/>(2017年2月24日現在)

SDG INDEX & DASHBOARDS website < http://www.sdgindex.org/>(2017年2月24日現在)

渋沢栄一 (著), 守屋淳 (訳)(2010)現代語訳 論語と算盤, 256頁, 筑摩書房

 

(by 北澤 哲弥)

コメントを残す

必須欄は * がついています


CAPTCHA