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企業人のためのエコロジー入門 No.6「外来生物との付き合い方」

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外来生物というと、とにかく悪者というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。私が非常勤講師をしている大学でも、外来生物は在来種を食べる悪者だったり、あるいは日本の生物より大きくて狂暴といったイメージを持つ学生が多くいます。カミツキガメが口を開けている瞬間や、牙をむくアライグマの映像などが繰り返しテレビで流れる影響かもしれませんが、「外来生物=怖い悪者」という短絡的イメージには少し戸惑いを覚えます。

もし皆さんが関わるビオトープや保全活動地で外来生物を見つけたら、どう対応しますか?全ての外来生物を駆除しようという人もいれば、できるだけ駆除はせずに自然に任せるという人もいます。今回は、こうした外来生物との向き合い方について、基本的な考え方をまとめていきます。

 

外来生物対策を考える上で最も重要なことは、自分が行っている保全活動の目的を再確認することです。ある場所で生物多様性保全活動をしている場合、その目的は外来生物の駆除ではなく、在来生物からなる生態系を保全することのはずです。外来生物の中には、オオクチバスのように池の在来魚やエビ類などを盛んに捕食したり、草地のアレチウリのように植生を覆いつくして在来植物を局所的に絶滅させたりする種もいます。実際に、外来生物によって保全対象の動植物に影響が出ている(あるいは出る可能性が高い)場合には、保全目的を達成するためにも外来生物を駆除することは避けて通れません。オオクチバスやアレチウリのように、在来生物や生態系あるいは社会に対して大きな影響を及ぼす外来生物を「侵略的外来生物」と呼びます。

一方、目に見えて悪さをしない(在来生物への影響が軽微な)外来生物もいます。例えば、庭や道端など身近な場所に咲いているオシロイバナは南米原産の外来植物です。子供のころにタネを集めて遊んだ人も多いのではないでしょうか。本種は江戸時代に日本に持ち込まれ、現在では日本各地に広まっていますが、在来の動植物や生態系に悪い影響を与えたという報告はこれまでに聞いたことがありません。オシロイバナも外来生物なのだから道端や庭から積極的に駆除するべき、と言われれば疑問が残ります。

このように外来生物の影響度は種ごとに大きく異なり、何でも一括りにして考えてしまうと、保全活動の効率を落としてしまいかねません。では、外来生物の影響度をどのように判断すればよいのでしょうか。自分たちで観察し調べるのも一つの手ですが、行政がまとめた外来生物リストを参照することもできます。例えば、環境省は「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」を作成し、生態系や社会への影響度をまとめています。また千葉県北海道のように、よりローカルな範囲での外来生物情報をまとめている自治体もあります。

 

さて、ここまで外来生物の駆除を中心に外来生物への対応を考えてきました。しかし駆除は大変な作業です。力仕事であることはもちろん、外来生物とはいえ生物の命を奪うという行為には心が痛みます。

そこで注目していただきたいのが、外来生物の侵入・定着を「予防」する取り組みです。外来生物は持ちこまれなければ、あるいは捨てられたりして野外に拡がらなければ、問題を起こすことはありません。個人レベルであれば、ペットや園芸植物を野外に捨てず最後まで面倒を見ることを徹底することが、外来生物を増やさない「予防」になります。企業においては、外来生物を事業で利用する機会を減らす(例:緑化での在来植物利用など)、物資輸送に伴う外来生物の混入を防ぐ(例:バラスト水など)といった取り組みが求められています。

しかし駆除活動と比べて、予防の取り組みはなかなか進んでいません。愛知目標の進捗状況を評価した「地球規模生物多様性概況第4版(GBO-4)」でも、外来生物対策において最も遅れているのは予防活動だと指摘されています。すなわち外来生物の予防は、今後、取り組みを進めなければならない喫緊の課題と言えます。

 

上記のように、外来生物対策は「入れない・捨てない・拡げない」ことが肝心です。保全活動の限られた資源や労力を効率的に使うためにも、外来生物を現場から駆除するという活動に終始するだけではなく、侵略的外来生物だけを対象にした選択的駆除の実施や、新たな外来生物の侵入・定着を予防する普及啓発の取り組みなど、総合的な外来生物対策を進めてみてはいかがでしょうか。

 

(by 北澤 哲弥)

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