エコパスコラム

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ビオトープこぼれ話1「冬の狭山緑地を訪ねて」

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2月下旬、春のきざしが感じられるころ、東京都東大和市にある狭山緑地を訪ねました。狭山緑地の南端には東大和市郷土博物館があります。弊社永石はこの博物館で自然観察会を定期的に行っており、博物館が指導する野生生物との共存をめざした緑地管理に関心をもっています。

この博物館の周りには、周囲の雑木林や湧水に生息する野生生物の保全を目的としたビオトープがあります。ビオトープというと、よく池づくりのことだけのように思われることもあります。しかし本来は、動植物が暮らし続けられるような環境があり、それぞれの環境に適した動植物たちがお互いに影響をおよぼし合いながら、餌をとり、休み、成長し、繁殖したりするような場所をビオトープといいます。ですから、ビオトープは池だけでなく、林や草原のほか、土手や藪、石垣、あるいは朽木などのような微小な環境まで、さまざまなタイプがあります。

今回は狭山緑地で作り出された色々なビオトープについて、その目的と特徴を紹介したいと思います。

 

◆水辺を利用する生き物たちのビオトープ

博物館の玄関先にある庭には複数の池があり、水生生物がすめる環境が整備されています。毎年まだ寒い冬のこの時期に、周囲の雑木林に生息するヤマアカガエルが産卵のためにこの池にやってきます。この日、池の中をのぞいてみましたが、今年はまだ産卵していないようでした。この池ではヤマアカガエルに適した環境を整えるため、池の中央に土を盛り、草が生える陸地をつくっています。盛り土の岸には湿地を好む草が密生し、周りの林から産卵にやってきたヤマアカガエルが鳥などに捕食されないような隠れ家が確保されています。夏にはゲンゴロウ類やマツモムシ、アメンボ類もこの池に飛来します。この池を整備した際は、あえて動物を入れることはしませんでした。それでも、周囲の林や湧水地に生息する水生生物が自然に飛来し、繁殖や餌場としてこの池が使われています。すなわちこの池は、池だけで独立した環境ではなく、周囲で保全されている林や湧水地とのつながりを重要視して創出されたビオトープだといえます。

 

◆笹薮を利用する生き物たちのビオトープ
博物館の建物の裏側は雑木林に覆われた丘陵が接しています。この雑木林は、鳥や昆虫が生息できるような多様な環境を作り出すための整備が行われています。その一つがクマザサの管理です。クマザサを全て刈るのではなく、一部を残しています。残された笹藪は、カマキリやチョウ、鳥類などに利用されています。この日はエナガウグイスシジュウカラを確認することができました。ウグイスはいつも薮の中にいるので姿を見つけるのは大変ですが「チャチャ」という鳴き声で識別できます。「ジョリジョリ」と鳴いていたら、エナガです。葉の落ちた冬の雑木林は、ウグイスやエナガ、シジュウカラといった小鳥たちにとっては、隠れ場の少ない環境です。そのため、笹藪は小鳥たちが安心できるねぐらとして、また天敵に狙われずにすむ採餌場として、大切な環境を小鳥たちにとって提供するビオトープとなります。このビオトープ整備で重要なことは、こうした笹薮を一か所だけ林の中に残すのでなく、あちこちに残すことです。それによって、鳥たちは移動と休息を繰り返しながら、安心して過ごせる環境を整えることができます。

 

◆石積みや枯れ木を利用する生き物たちのビオトープ

狭山緑地の雑木林では、地元のNPOによって間伐や下草刈りなどが定期的に行われていますが、それ以外に動物の多様な生息環境の創出を目的として、石や間伐材を使ったビオトープがつくられています。その一つが石積みビオトープです。こうした石積みは、すきまに隠れる習性のあるカナヘビトカゲ、ヘビ類などの爬虫類に好適な環境となります。石積みが作られて数年が経過すると、多くの生きものが住み着き、石のすきまから顔を出すカナヘビやシマヘビの姿を見ることができるようになります。

写真の奥に見えるのは、枯れ枝積みビオトープです。散策に訪れる人が多い雑木林では、安全確保のために立ち枯れた木を伐採するため、林の中に枯れ木が少なくなることがあります。そうした場合、遊歩道から離れたところに枯れ木や枯れ枝を積み上げることで、安全を保ちながら、カミキリムシ類やタマムシ類など枯れ木を必要とする動物のためのビオトープを整えることができます。

雑木林の中でも、こうした石積みや枯れ枝積みビオトープが複数あることで、爬虫類や昆虫類の移動・分散を考えた生息環境を提供することができます。このような小動物が林内に生育することによって、食物連鎖など生きもののつながりがより豊かになり、安定した生態系を再生することが期待されます。

 

◆ヒサカキの果実を利用する生き物たちのビオトープ
 雑木林の環境を多様にするための管理の一つに、鳥の餌場づくりのための林床管理があります。写真を見ると、葉を落とした背の高い落葉樹の下で、隣り同士の枝が重なり密生して生えている常緑樹があります。これはヒサカキです。ヒサカキが密生すると、その下は暗くなり、明るい雑木林を好むスミレ類やエンゴサク類などの花は見られなくなってしまいます。一方、ヒサカキは秋が深まる頃に果実が熟すため、メジロシロハラルリビタキなど、雑木林で冬越しをする鳥たちにとって重要な食料源となります。

このように、雑木林管理と言っても一様に同じ環境を整えるのではなく、その地域の動植物を考慮して多様な環境を創りだすことで、より多くの動植物が暮らすゆたかな森林生態系の保全再生につなげることができます。

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