Global Risks Report 2020が示す生物多様性への危機意識の高まり

先月下旬、スイスのダボスにて世界経済フォーラム(ダボス会議)が開催されました。この会議では世界経済だけでなく幅広いテーマについて議論がなされます。毎年この会議にあわせて、世界の政財界のリーダーや専門家へのグローバルなリスクに関する意識調査の結果を集約した「Global Risks Report」が発表されます。今回発表されたGlobal Risks Report 2020では、世界が「生物多様性の損失」を最も重大なリスクの一つと捉えていることが明らかになりました。

今年のレポートでは、今後10年間に増大すると考えられるリスクのトップ5全てを環境関連リスクが占めました。昨今、私たちも身にしみて感じている「極端な気象」や「自然災害」などの環境課題とともに、「生物多様性の損失」もここに含まれます。下図はGlobal Risks Report 2020の結果に基づいて、世界経済フォーラムがPwCとともに公表した「Nature Risk Rising: Why the Crisis Engulfing Nature Matters for Business and the Economy」から引用したものです。これをみると、ここ数年で生物多様性の損失に関する世界のリーダーたちの懸念が急激に高まっていることがわかります。

また下図が示すように、短期(2020年内)では76.2%の人が生態系の破壊によるリスクが増大すると回答しています (Global Risks Report 2020より引用) 。とくに若者(Global Shapers)に限ると、この値は87.9%まで上がります。いずれも高い数値ではありますが、これからの社会の担い手である若者たちが、生物多様性をはじめとした環境課題に対してより強い危機感を持っている、ということが改めてわかります。

本レポートが示すように、地球上の生物の絶滅率は過去と比較して数十~数百倍に達し、さらに加速しています。こうした生物多様性の損失は、食料供給や医療システムの崩壊、サプライチェーンやさらには経済市場の混乱まで、人類に多大な影響を及ぼす可能性があります。生物多様性リスクは、自然への依存度の高い第一次産業だけでなく、第二次産業や第三次産業など全ての企業に関わる問題なのです。

気候変動リスクに比べると、生物多様性に関する理解や取り組みは出遅れ感があります。今年2020年は中国で生物多様性条約のCOP15が開催されます。これを契機に、自社と生物多様性との関わりを見つめ、何をすべきか考えてみてはいかがでしょうか。弊社でもこのブログなどを通し、企業による生物多様性への取り組みを支援する情報を提供していきます。

(北澤 哲弥)