OECMと企業との関係とは?

 TNFDの話題が多い昨今ですが、今年に入ってから「OECMに取り組んだ方がよいか?そのためには、どうすればよいのか?」そんな質問を耳にする機会が増えています。まだ設計中の制度ですが、企業にとって利用価値のある制度になりそうに感じます。そんなOECMのポイントについて、今回は考えてみたいと思います。

 OECMは30by30と深く関係しています。30by30は「陸域と海域の30%ずつを2030年までに保護区にする」という国際目標です。日本は昨年のG7サミットで、この目標の達成を約束しました。目標とする30%に対し現状はどうかというと、日本の陸域の20.5%、海域の13.3%が保護地域となっています。陸域ではあと9.5%必要ですが、これは関東地方より若干広い面積に相当します。国立公園など公的な保護区の拡充をこれから進めるようですが、すでに指定しやすい場所は保護区になっていますので、これだけの面積の保護区を拡大することは、かなり難しいと思われます。

 ではどうするか。その解決策の一つとして期待されているのがOECMです。OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)とは、公的な保護地域以外で生物多様性保全に資する地域のことです。里地里山や社有林、社寺林など、企業や団体によって生物多様性の保全が図られている土地が対象となります。その土地は、必ずしも生物多様性の保全が主目的である必要はありません。例えば人工林は木材生産を主目的とした土地ですが、環境に配慮した森林管理を行うことにより、結果的に生物多様性も守られているのであれば、OECMの対象になりうるということです。他にも市街地や郊外にある企業の工場などでも、生物多様性に配慮した緑地管理が行われていれば対象となりえます。

 OECMに認定されると、世界の保護区データベースにその場所が登録されます。つまり企業にとっては自社の生物多様性活動が、30by30という国際目標に直接的に貢献するものである、というお墨付きを得られるわけです。わかりにくい指標が多い生物多様性の取組にあって、OECMは一つの明確な指標となります。4月に発足した30by30アライアンスにはすでに多くの企業が参加していることからも、その関心の高さがわかります。弊社もその一員として30by30の達成に向けて協力していく所存です。

 ではどうすればOECMとして認められるのでしょうか。じつは認定の基準やプロセスは設計中で、来年度から国による認定が開始される予定です。環境省の検討会資料によれば、4つの認定基準があり、大まかに言えば以下のような内容です。

  1. 境界(範囲が明確など)
  2. ガバナンス(管理の目的や体制などが明記されていること)
  3. 生物多様性の価値(保全に値する動植物や生態系サービスを対象地が保有していること、その価値が資料としてまとまっていることなど)
  4. 管理による保全効果(管理の目的や内容が生物多様性の価値の保全に貢献すること、生物多様性への脅威への対策が取られていること、モニタリングを実施していることなど)

 なお環境省では、OECMに認定された土地の生物多様性の価値を切り出し、市場ベースでやり取りするスキーム、いわば生物多様性版のJ-クレジット制度を検討するとしています。こうした経済的インセンティブなども含め、環境省ではOECMを民間参画の一つの柱として活用していこうと動いているようです。

 OECMに関心はあるけれど、まだ決まっていないから来年まで待っていればよいかと言えば、そうではありません。上記1や2は比較的簡単に準備ができそうですが、3はその土地の動植物や生態系サービスの価値を示すための資料がなければならず、そのための調査が必要となるでしょう。また4では、生物多様性にどのような脅威があるのかを調べる必要がありますし、専門的知識を持った人材を含めたモニタリング体制をつくる必要もあります。申請しようと思っても一朝一夕にはできない取り組みですので、こうした準備を早めに開始しておくことが大切です。

参考URL
https://www.env.go.jp/press/110887.html
https://www.env.go.jp/nature/oecm.html

(北澤哲弥)

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