愛知COP10から10年、これからの生物多様性の重点領域は?

9月15日、生物多様性条約事務局は、世界の生物多様性を保全するための2020年までの戦略計画「愛知ターゲット」の進捗状況をまとめた「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5:Global Biodiversity Outlook5)」を発表しました。

レポートによると、侵略的外来種の特定や保護地域の面積など、小項目では当初目標を達成できたものもあり、2010年名古屋でのCOP10以降、生物多様性の保全に向けた一定の進捗が見られています。しかし生物多様性を構成する生態系、種、遺伝子のいずれのレベルでも、その損失は止まっていません。20の目標のうち完全に達成されたものはゼロ、部分的に達成された目標も6つだけ。このレポートは、我々の取り組みが不足していることを明確に示しています。
日本自然保護協会が上記の結果をより詳しくまとめています)

COVID-19の影響で来年に延期されたCOP15では、2030年に向けた生物多様性フレームワークが議論され、その結果がSDGsなどにも反映されます。SDGsの目標年でもある2030年までに生物多様性の損失を止め、プラスに転じていくためにはどうすればよいのでしょうか。このレポートでは、1つの正解は存在せず、様々な取り組みを組み合わせていく必要があることを示しています。

改変して引用: Secretariat of the Convention on Biological Diversity (2020) Global Biodiversity Outlook 5. Montreal.

そして8つの分野に着目し、変革の重要性を訴えています。
1)陸域と森林の保全と再生
2)淡水域の保全と再生
3)海洋の保全再生と持続可能な漁業への移行
4)持続可能な農業への移行
5)供給から消費まで、サステナブルで健康な食料システムへの移行
6)自然を活用した都市とインフラ構築
7)生物多様性を含む他のSDGsにもプラスとなる気候アクション
8)健全な生態系が人々の健康につながるワンヘルス・アプローチ

今回のレポートは、企業にとっても生物多様性への対応を再考する機会となります。上記8つの視点を持ちながら、自社と生物多様性との関係を見つめ直してみると、これまでに見えていなかった新しい気づきがあるかもしれません。

(北澤 哲弥)

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